~Meets上田のまちとは~
古くても趣きある建物、街並み、雰囲気に魅力を感じ、うまくリノベーションしてお店を始めたり、暮らしたり・・・そんな人たちが上田のまちなかに増えてきています。
Meets 上田のまち は、リノベーションをテーマに長野県上田のまちなかで商う・暮らす・働くひとびとのStoryや建物に出会うまちあるきです。空き家や古い建物を利活用したい、お店を開業したい、働く拠点にしたい、上田のまちなかのことを知りたいという方、UIターン、市外県外の方にも参加いただけます。
本事業はまちづくり上田株式会社 が主催し、事業者や市民の活動を支援しエリアの価値を高める「リノベーションまちづくり」の取り組みの一環として開催しています。
2025年11月開催 「Meets上田のまち」レポート
2025年11月17日(月)、 リノベーションをテーマにしたまちあるき 「Meets上田のまち」の第4回が開催されました。 今回は、上田駅お城口から延びる大通りを中心に、 かつて住居や店舗だった空き物件を3軒ほど見学するほか、 実際に空き家を活用して宿や飲食店を営む2店舗にお話を伺いました。 過去の記憶を引き継ぎ未来へと繋いでいく、 そんな上田のまちの息遣いが感じられた当日のまちあるきの様子をお届けします。
▲当日回ったルートはこちら
元社宅をリノベーションした商業施設 「KOKAGE bldg」見学&自己紹介
最初に目指すのは、上田駅のほど近く、元JR東日本の社宅だったという4軒長屋のビル。4店舗が入居できる商業施設「KOKAGE bldg 」として生まれ変わり、オープンなウッドテラスが店舗同士をつなぎ、居心地の良い空間をつくり出しています。
現在はパスタのお店「LULUPO」と本屋の「KOKAGE BOOKS」が入居。もうじき美容院もできるそうで、ちょうど工事が行われていました。もう1軒はテナント募集中なので、カフェや雑貨店など、どんなお店が入るかと期待が膨らみます。上田駅の電車の待ち時間やちょっとした空き時間など、気軽に立ち寄れるまちの交流拠点になりそうです。
▲元は和室やキッチンダイニング、押し入れ、風呂トイレがあったという1階。2階には2部屋あるそう。アイデア次第でさまざまな活用法が考えられそうです
建物を見学した後はKOKAGE BOOKSの2階へ移動して、まちあるきのオリエンテーションと参加者の自己紹介タイムへ。前回に引き続き、案内人・コーディネーターを務めるのは宮嶋絵美子さん。上田市出身で、京都や名古屋、東京といった都市に住んだ後、Uターン。現在は上田市内の工務店に勤め、古い建物の仲介やリノベーションに携わりながら、まちなかを舞台にしたマーケットイベント「にーろく市 」を6年前から主催。「Meets上田のまち」では官民一体となって空き家を調査・利活用する活動に運営として携わっています。
▲中央に立つのが「Meets 上田のまち」案内人・コーディネーターの宮嶋さん
今回は県内外から11名の参加者が集い、なかには上田市へ初めてお越しの方も。「上田市でお菓子屋さんを開きたい」「空き家を改修して宿を開業したい」「古民家のリノベーションに興味がある」「上田市に住みたいので物件を探している」など、さまざまな参加理由や想いが語られました。 さっそく街中の空き物件や宮嶋さんが仲介・工事を担当した店舗を巡りに、まちあるきスタートです。
駅近の2階建て、 元鮮魚店の「小池水産」
最初の空き物件は、上田駅から徒歩3分ほどのメイン通りに位置する「小池水産」。7~8年前まで鮮魚店だったという建物1階は間仕切りのないオープンな空間で、魚屋だったので水が流れるよう少し勾配があります。「面積的には小ぶりなのでリノベーションしやすく、奥に厨房もあるので、カウンターやテーブルを設けて飲食店が良さそう」と、宮嶋さん。
2階は元住居で、和室が3部屋とミニキッチン、トイレがありました。特徴的なのが、建物裏のベランダから石垣が見えること。大富豪の方のお屋敷の石垣かと推測され、この景色を活かした空間にできたら上田の街の歴史も感じられて面白そうだと話していました。
▲ベランダ右側に石垣の壁がある
経年による傷みや古くなっている箇所も多いので、使い方によっては改修費用は大きくかかりそうとのこと。家賃もこれからの検討になりますが、駅から近いこの立地を生かして何か特色のあるお店ができれば、街の新たなランドマークとして活気を生み出せそうです。
窓や扉がかわいらしい元理容室 「理容タケウチ」
小池水産からメイン通りを少し北上し、到着した「理容タケウチ」。角丸四角形の窓や、木枠のアーチ型の扉など、外観の意匠に思わず乙女心をくすぐられます。5年前まで家族で理容室を営みながら2階で暮らしていたと言い、現在は空き物件で売却を希望されています。
全体で15坪というこじんまりとした店内に入ると、理容室時代の赤い電動椅子と、鏡の前から引き出すシャンプー台がそのまま残されていました。現代ではなかなか見られないレトロで貴重なお宝に、一同興味津々。そのまま理容室として生かすのも良さそうです。
店舗奥にキッチン・風呂トイレ・洗濯場、2階に和室が3部屋、3階は物干場となっています。小さくお店を営みながら、街中での暮らしを楽しめそうな場所です。
▲前回のまちあるきで見学した「kasasagi by nokiro」を通り過ぎ、次なる目的地へ
上田高校生も通ったという元食料品店 「深澤商店」
続いて訪れたのが、上田高校のそばにある元食料品店。40年ほど前に建てられた鉄骨造の3階建ての建物で、道路に面した1階で魚や青果の販売をしていました。上田高校生はパンやアイス、ジュースなどを買いによく立ち寄ったと言い、彼らの青春の思い出の店です。
今回のまちあるきのために名古屋から所有者さんも駆けつけてくださり、建物を案内してくださいました。店舗奥がキッチンなどの居住エリアで、そのまま2階へ上がると和室があり、今すぐにでも暮らせそうなほどきれいに維持されています。
▲1階の居住エリア奥にある和室。2階にも和室が2部屋あります
そしてこの物件の驚くべきポイントは、外階段から2・3階へ上がると、テナント貸しできる別空間が存在すること。「2階は壁を打ち抜けば住居側と一緒になるので、用途次第でそのようなリノベーションをすることも可能です」と、宮嶋さん。
▲外階段から入るテナントエリア2階。過去に企業に貸し出していたこともあるそう
▲テナントエリア3階。右端が所有者さん。物件は売却希望だそう
そして3階は広々としたオープンフロア。剥き出しの鉄骨が無骨でかっこ良い空間になっています。窓も多く見晴らしもばっちりで、夏には花火も見えそうです。元々は部屋を4つ作る予定でしたが、結局一度も使わずにそのままだそう。 鉄骨のためレイアウトも変えやすく、部屋も多いので、宿やアトリエ、スタジオ、複数人でシェアオフィスにするなど……さまざまな活用法が考えられ、夢が膨らむ物件でした。
再びメイン通りへ戻り、次なる目的地へ。途中、テナント募集中の看板が出ている物件もチェック。こうして実際に歩いてみることで、思わぬ物件と出会えることもありそうです。
元タバコ店をリノベーションした カフェバー併設の宿「ONYO Hotel and Lounge」
空き物件の見学が続いたところで、今度は実際にリノベーションして生まれ変わった店舗を見ていきます。 一つ目は、地元出身の長崎航平さんが 11月中旬に開業したばかりの宿「ONYO Hotel and Lounge」。元タバコ店だったという四角い平面の建物のガラス戸を開けると、木の温もりが溢れ、シンプルで洗練された空間に居心地の良さを感じます。
▲中央がオーナーの長崎さん
宿開業の動機は、長崎さんが日本各地を転々と旅していた頃、「宿を起点にその街を知っていくことが心地よかった」という経験からきていると話します。「地元の上田も、書店や銭湯、喫茶店など素敵な個人店がたくさんあります。それなら自分も宿を開けば、街の入り口として、街の価値を提案できるのではないかと思いました」。
そのため、街全体を一つの宿に見立て、ONYOではドミトリーと個室の計4室、シャワーと洗濯機という最低限の宿泊設備にとどめ、あえて食事は用意せず、なるべく外に出て街を楽しんでもらっていると言います。また、この物件を選んだ理由は、上田のメイン通りの交差点の角にあり、入り口が街に面して開かれているところが決め手だったそう。まさに街と人をつなぐ宿にぴったりの立地や設計に、運命的なものを感じます。
コンセプトがしっかりとあり、それに沿った物件、提供サービスや設備が選択されているところに説得力があり、今後お店を開業するすべての人に参考になりそうなお話でした。
▲個室(写真)が3部屋と、もう1室はドミトリーで二段ベッドが2つあります
建物の仲介や工事は宮嶋さんの工務店が担当しました。市や県の補助金も使いながら、予算の範囲内で設計士と相談し、間取りはほぼ変えず、残せるところは残して改装工事を実施。並行して塗装や左官、床のカーペット貼りなどのDIYを自分たちで行いましたが、予想以上に大変だったそう。 「DIYは予算は抑えられますが、やったらやったで大変。職人さんがやるより相当の時間がかかるので、費用と時間、何を優先するか、そのバランスや判断が難しいところ」と、宮嶋
さん。リノベーションのリアルな苦労話や開業までの想いに触れて、参加者の皆さんも勉強になっていた様子でした。
古民家をリノベした醤油醸造所& カフェバルの「勢登家」
リノベーション事例の二つ目は、前回のまちあるきで改修の途中経過を見学させてもらっていた「勢登家」。古きよき街並みが残る「柳町」にあり、今回巡った中で一番のザ・古民家な物件です。 長かった工事も終わり、2025年2月についにオープン。醤油の醸造所をベースにその仕込み体験ができるほか、カフェ&バルとして発酵料理も楽しめるお店で、柳町の新たな注目スポットとなっています。
▲宮嶋さんの横に立つのが店主の水谷さん
店主の水谷淳二さんに、開業までの話を聞いてみました。水谷さんは三重県出身で、2012年に上田市へ移住。会社員として働く傍ら、10年前から醤油作りのワークショップを行っており、しだいに“醤油の醸造所を造りたい”という夢を抱くようになったそう。
自宅でパン店「日なた堂ベーカリー」を営む奥様と二人でキッチンカー出店も行いながら、醸造所と飲食業の両方ができる理想の物件を探しつづけたところ、宮嶋さんがこの物件を発見し、水谷さんに紹介。「吹き抜けの雰囲気や立派な神棚を見て、直感で気に入った」と振り返ります。
▲2階部分に見事な神棚。建物の歴史を感じられます
しかし40年も空き家だった古民家の改修は一筋縄ではいかず。最初は荷物が大量にあり、使えるものと捨てるものとを確認しながらほぼすべてを自身で片付けた上、埃も多く、掃除も大変だったそう。さらに工事費用も大きく銀行の融資を受けたり、設計変更があったりで、工事の着工まで1年半近くかかったと言います。現在のきれいな店舗からは想像できませんが、リノベーションの裏側には、どの店もそれ相応の苦労が偲ばれます。
「結果的に元の建物の構造や建具を生かして、あまり手は加えていないです。煤で黒くなっていた壁の上のほうの風合いに合わせて、壁をすべて黒で統一して塗ったりと、元の古民家の趣を残しています」と水谷さん。
▲黒で統一された壁と吹き抜けに、モダンな照明がおしゃれ
改装して全てを新しくすることもできますが、できるだけ建物の歴史や風景を引き継いでいくこと。それが結果、街の景観や空気感を守り、個性や魅力につながっていく。二つのリノベーション事例を見て、そんなポイントも見えてきました。
まちあるき終了後の参加者の声
充実した約2時間半のまちあるきが終了し、そのまま勢登家で本日の感想を語り合いました。その一部を紹介します。
●物件を見て自分だったらこうしたいな、ああしたいなと想像できて楽しかった。お店を始めた人の具体例も知れて参考になった。 ●入居する前の物件を見たり、所有者さんの話を聞いたりすることはなかなか無いので勉強になった。 ●街にどんな人が歩いているのかを見て、どんなニーズがあるのか、想像を膨らませた。引き続き物件を探したい。 ●物件の歴史を知り、その想いが誰かに引き継がれて繋がっていくのだということを肌で感じられてよかった。 ●空き物件と、生まれ変わった物件の両方を見て、こんなに変わるのだなと想像力が豊かになった。今日見た空き物件の未来も楽しみ。
宮嶋さんからは上田市の不動産の現状について話がありました。「今上田市は結構動いている時期で、空き物件の掘り起こしをしていると、いつの間にか急に空いていて、またいつの間にか埋まっているということが増えています。これも縁とタイミングなので、常にアンテナを張っておくことが近道だと思います」。
そして物件との縁を繋ぐのにもう一つ肝心なことは、人との繋がり。「こうした場であったり、商工課や商工会議所にでも、こんな物件を探しています!という話しをしてもらえれば最善を尽くすので、どんどん伝えてほしい」とのことでした。さっそく参加者同士でも情報交換をしたり、連絡先を交換したりする姿も。
今回のまちあるきで得られた出会いや経験が、より良い上田の未来を形づくる一歩になるかもしれません。そして次回のまちあるきでは、どのような新しい上田の景色が広がっているのか――そう想像するだけでわくわくします。そんな町の進化に期待して、これからも引き続き上田の町の再生の物語を追い続けていきたいと思います。
写真・文 : 佐藤妃七子
日 時
第4回
2025年11月17日 (月曜日) 13時30分から 16時30分まで
対 象
こんな人募集!
空き家や古い建物を利活用したい
お店を開業、働く拠点にしたい
暮らしたい
まちの賑わいに貢献したい
上田のまちなかのことを知りたい
UIターンを考えている人
集合時間・場所
集合時間
11月17日 (月曜日)13時30分
集合場所
上田駅 水車前広場
スケジュール
オリエンテーション(10分)→ エリア内のまち歩き(2時間程度)→ 相談会・交流会(30分程度)
申込はコチラ
お問い合わせ
まちづくり上田株式会社 長野県上田市大手1-10-22(上田商工会議所内) TEL.0268-22-4500
2024年11月開催 「Meets上田のまち」レポート
2024年11月11日(月)、 リノベーションをテーマにしたまちあるき 「Meets上田のまち」の第3回が開催されました。 空き家を利活用してお店などを営む 4軒にお話を伺うほか、 改修工事中の古民家や使い方が 決まっていない空き家物件まで、 まちに点在する様々な場所を見て回りました。
▲当日回ったルートはこちら
参加者9名とまちあるきスタート
参加者は県内外から訪れた9名。最初に海野町通りに面した劇場兼カフェ「犀の角」に集合してオリエンテーションと自己紹介を行いました。参加理由は「上田にUターンしてお店を始めたい」「なじみのある上田で終の住処を見つけられたら」「将来、空き家を改修して宿泊施設を始めたい」など様々で、興味の深さが伝わってきました。
案内人・コーディネーターを務めるのは、前回に引き続き宮嶋絵美子さん。上田市内の工務店で古い建物の仲介やリノベーションに携わりながら、まちなかを舞台にしたマーケットイベント「にーろく市 」を5年前から主催するなど、公私を超えてまちの活性化に力を注いでいます。この日は、宮嶋さんが仲介やリノベーション工事を担当した店舗を巡りました。
祖父母から継いだ建物を 店舗+イベントスペースに 「kasasagi by nokiro」
最初に向かったのは、上田駅からほど近い「kasasagi by nokiro」。店主の伊藤陽子さんがセレクトした器やアパレルを扱うショップと、イベントなどに使うフリースペースで構成されています。築110年ほどの建物は、かつて伊藤さんの祖父母が暮らしていた場所。京都や広島でお店を営んでいた伊藤さんがUターンして建物を引き継ぎ、2015年にオープンしました。古い建物の雰囲気を生かすためリノベーションは最小限にとどめ、DIYも交えて工事を行ったといいます。
▲右端が案内人の宮嶋絵美子さん、その左が店主の伊藤陽子さん
宮嶋さんは「古い建具を再利用したり壁に古材の板を貼り合わせたり、古いものの魅力を生かしていますよね。空間を作り込みすぎていないからイベントに合わせてレイアウトを自由に変えながら、うまく使われているなと思います。古建具はうちの会社にあったものも使って頂きました」と話しました。
▲壁の一部にはDIYで古材や古建具を貼っている店内。古い柱や梁になじんでいます。
長く県外で暮らしてきた伊藤さんに上田の魅力を尋ねると「ほどよく田舎であること」と話してくれました。「東京のようにたくさんのお店はありませんが、コーヒーならここ、パスタならここといったように、素敵なお店がそれぞれある。しかも新幹線ですぐ東京へ行けるから便利ですよね。一方でこうした古い建物がどんどん壊されていくのが残念だから、保存や改修を後押しする制度が整うといいなと思います」。
昭和の名残が残る元住居 「大手一丁目ビル」
続いて訪れたのは、元住宅の「大手一丁目ビル」。現在は空き家で、「にーろく市」などのイベント会場に使われています。板張りの食堂や台所、和室と、懐かしく味わいある空間。「いずれは1階にお店が入居し、2階をシェアオフィスにできればと妄想しています」と宮嶋さん。
▲大手通りから一本路地を入った場所にある「大手一丁目ビル」
きれいな状態ですぐにでも入居できそうですが、ここに至るまでに雨漏り修理や電気工事など、かなり手を入れたのだそう。使われていない期間が長いほど建物は傷み、改修作業が増えることが分かります。
▲壁や床は元のまま生かし、奥のキッチンはイベントで使えるように電気工事を行いました
次の目的地への道中で出会ったのが、白いタイル貼りのこちらのビル。昭和から平成にかけてクルミ店が営業していた、地元ではおなじみの建物です。現在は1階にコーヒーと焼き菓子の店「EASY BAKE」、2・3階にアパレルのセレクトショップ「EDISTORIAL STORE」が入っています。
▲「EDISTORIAL STORE」のビルの前で解説する宮嶋さん
古道具店+ デザイン事務所が入居する 「26bldg」
大手通りから北国街道方面へ路地を進み、到着したのは「26bldg(にーろくビル)」。かつて銭湯の倉庫だった場所で、空き家の利活用の拠点として開いています。現在は1階に「古道具にろく」、2階にデザイン事務所が入っています。古道具にろくでは、空き家や空き店舗から引き取られた古い物が売られています。
昭和42年建造で、構造は当時流行していたブロック造。外壁を這うツタが目印です。自然のままにしておくと建物を覆い尽くしてしまうため、年3回は剪定を行っているそう。
▲26bldgの前で。建物の前にはお濠だった水路が流れています
▲1階の「古道具にろく」店内にて
▲26bldgの前の通り。3カ月に一度開催される「にーろく市」では、この通りが多くの人でにぎわいます
障害のあるメンバーの仕事と 創作の拠点「屯」
26bldgから歩いてすぐの場所にあるのが、NPO法人リベルテ運営の「屯(とん)」。とんかつ屋だった建物をリノベーションした建物です。1階の厨房では障害のあるメンバーの就労支援の一環としてメンバーの給食を作り、2階のアトリエではメンバーが創作活動を行っています。
▲「屯」の前で、リベルテ代表の武捨さんと
リベルテ代表の武捨(むしゃ)和貴さんにお話を聞きました。物件を賃貸ではなく購入することを選び、予算をかけてリノベーションしています。例えば厨房は元の設備を生かしていますが、長年の油汚れが蓄積していたため専門の清掃業者を入れたり配管設備を交換したりとじっくり手を加え、働きやすい環境を整えました。ちなみに購入時はオーナーの荷物が室内に大量に残った状態で、廃棄に数十万円の費用がかかったといいます(廃棄費用はオーナー負担)。
▲リノベーションで明るく生まれ変わった厨房
武捨さんと宮嶋さんが勤める工務店が親しかったことで建物との縁がつながりましたが、武捨さんは日頃から他の不動産会社とも密に連絡をとり、いち早く物件情報を仕入れていたそう。物件探しの参考になりそうです。
「上田の魅力は徒歩圏内に色々な人がいて、ちょっとした立ち話で事業の相談ができること」と武捨さん。「そうしたつながりはどうやって作ればいいですか?」と質問があがると、「私が地元出身なのもありますが、『こんなことを始めたい』と口に出していると誰かが声をかけてくれたり、この人に会ってみたら?と紹介してもらえたりするんです。上田は新しいことを始める人に寛容で、サポートしてくれる気質があるんですよね。商工会議所に相談するのも一つの方法だと思います」と武捨さん。宮嶋さんからも「まちの人が企画するイベントも多いので、そうした場に顔を出すとつながりが生まれるかも」とアドバイスがありました。
▲話をする武捨さん。室内の小上がりは元の間取りを生かして畳を交換しました
洋品店をリノベーション 「古着屋ヒノメ」
続いて、元洋品店をリノベーションした「古着屋ヒノメ」へ。店主の宮森唯史さんが信州大学繊維学部の学生だった3年前に開業し、独自の視点でセレクトした古着を販売しています。
▲かつて1階が店舗、2階が住居として使われていた建物
築年数を重ねた建物は、外から見ると懐かしい商店そのもの。昔ながらの急な階段を上がった2階も売り場で、コンパクトな店内に並ぶ素敵な商品にわくわくします。
「古い建物に抵抗はなかったですか?」と参加者が質問すると、「見た目がきれいな店だからというより、服そのものが良いから買うといった本質的なところを考えました」と宮森さん。アパレル業界が抱える大量廃棄問題の改善を目指し、アップサイクルの考え方を浸透させたいと話していました。
▲店内にて。右奥が店主の宮森唯史さん
古民家をリノベーションして 醤油醸造所へ
活用が楽しみな空き家物件
最後に訪れたのは、北国街道にほど近い空き家物件。持ち主が去って長い時間が経ち、現在は宮嶋さんが勤める工務店が新たな借り主を探すお手伝いをしています。
中に入ると奥へ奥へと空間が続き、外観からは想像もできないほど広い間取り。複数世代がにぎやかに同居していた雰囲気がうかがえました。家具や調度品もそのまま残されていて、2階には持ち主の趣味と思われる画材類や画集も。
▲室内の様子
広さを生かして複数の店舗でシェアしたり、2階は住宅として使ったり……と妄想が広がります。とはいえ老朽化で傾いている部分があるなど改修費用がかさむため、賃料も上がりそうとのこと。空き家の利活用では、改修コストとのバランスが悩ましいところです。それでも、この場所が再生されれば周辺の空き家を活用する起点になるかもしれないという話に、期待が膨らみます。
▲袋町の歓楽街も歩きました
まちあるき終了後の参加者の声
たっぷり2時間超のまちあるきが終了。参加した皆さんからあがった感想の一例を紹介します。
●普段は車移動なので、路地にあるお店や空き家をじっくり見ることができて新鮮だった ●工務店の仕事をしていて、自分なら古い物件は壊すことを提案してしまいがち。残すことは大変だと思うけれど、何かの形でサポートできたらと感じた ●実際に起業した方の話を聞いてイメージが湧いた ●開業は壮大な試みだと思っていたけれど、若くして起業された方の話を聞き、もっと簡単に考えてもいいのかもと感じた ●kasasagi by nokiroやヒノメはそこまで作り込まずラフな空間で開業して、きちんと回っている。店舗開業のハードルは意外と低いのかもしれないと感じた
▲まちあるき後、参加者の皆さんと感想を話し合いました
宮嶋さんからは、空き家は持ち主とのマッチングや、まちでの役割をトータルで考えて借主を探しているという不動産目線の話がありました。「一般的なテナントビルと違って、空き家は誰にでも貸すことはしません。借主がどんな方かある程度知った上で、業態や人柄が大家さんと合いそうと感じたら声をかけています。誰でも入居できるようにするとまちが雑然としてしまうから、不動産屋がフィルターになってセーブすることが、まちを良くするために必要だと考えています」。
マッチングの入り口になるのが、今回のようなまちあるきや空き家見学会です。宮嶋さんや主催者のスタッフからは「自分に合う場所を見つけるためには、人のつながりが大切。上田は人とのつながりがコンパクトで密なので、私たちや市役所の移住交流推進課にどんどん声をかけてほしい」との言葉がありました。この日まちを歩いて様々な人の話を聞いた経験が、参加者の皆さんにとって何かのきっかけになることを願っています。
写真・文 : 石井妙子
日 時
第3回
11月11日 (月曜日) 13時30分から 16時30分まで
対 象
こんな人募集!
空き家や古い建物を利活用したい
お店を開業、働く拠点にしたい
暮らしたい
まちの賑わいに貢献したい
上田のまちなかのことを知りたい
UIターンを考えている人
集合時間・場所
集合時間
11月11日 (月曜日)13時30分
集合場所
「犀の角」 上田市中央2丁目11−20
スケジュール
オリエンテーション(15分)→ エリア内のまち歩き(2時間程度)→ 相談会・交流会(30分程度)
イベントレポート
2024年7月9日(火)と7月29日(月)、 リノベーションをテーマにした まちあるき「Meets上田のまち」を開催しました。
まちあるきの概要
「Meets上田のまち」の特徴は、実際に利活用できそうな物件を紹介するほか、古い建物をリノベーションして実際に商いや暮らしを楽しんでいる店舗オーナーを訪問し、物件との出会いや開業までの経緯、リノベーションの様子や創業支援をどのように活用したかなど、リアルなお話を聞くことができる点です。また、前後のオリエンテーションでは創業支援や移住支援など、市や商工会議所の担当者からアドバイスを受けられるというメリットもあります。
エリアをわけて実施
今回は海野町商店街にある劇場とゲストハウスをそなえた文化施設「犀の角」を拠点として実施しました。9日は常田(ときだ)、鷹匠町(たかじょうまち)エリア、29日は柳町、鍛治町(かじまち)エリアを中心にまわりました。どちらも上田市の中心市街地であり、城下町や北国街道の風情を残す、趣きのある建物もまだ多く残るエリアですが、それぞれのまちで人の流れや雰囲気に特色があります。
参加状況
盛夏の中の開催でしたが、キャンセル待ちを含めて多数お申込があり、各回10名を超える方々にご参加いいただきました。県内のほか、関東、遠くは中国・四国地方から、上田市への移住や創業を見据えて何かヒントを得られればと参加。なかには9日、29日と両日参加の方もいました
お申込みの理由は ●ここ数年の間で店舗を構えたいので何か参考になれば。 ●実際に物件を探している ●移住を検討中、上田のまちの事をもっと知りたい といった回答がありました。
参加者の声、訪問した店主の声
参加者にはまちあるき後に感想を共有して頂きました。 ●歩いたことのない場所で新しい発見がたくさんあり勉強になった ●実際にお店をされている方、起業された方の話が聞けてよかった ●物件の探し方や大まかな改修費用等が聞けて良かった ●このようなイベントがあればまた参加したい ●リノベーションのイメージが湧いた ●市街地エリアだけでなく、いろいろなエリアを見れるともっとよいと思う
同行した商工会議所担当者や市の移住担当、商工担当にそのまま相談やアドバイスを受ける方もいらっしゃいました。相談時間が少なかったことが今回の反省点です。
訪問店舗様には事前に用意した質問を共有し 当日お話し頂きました。 どのお店の店主も皆さん熱心に対応頂き、普段の営業中とはまた違う場でリアルなお声や人柄を感じられました。店主からは、「改めて開業時やこれまでのことを振り返る良い機会になった。」というお声や、「またこのような機会があれば協力します。」という有難いお言葉も頂きました。 まちあるき後に気になって再度来店された参加者もいたそうです。
また、嬉しいことに今回のまちあるきをきっかけに、当日ご紹介した空き物件の借り手が決まったという知らせもありました。
次回の開催予定について
冒頭に記載したように参加者は趣きのある古い建物やまちなみに興味があるという方がほとんどでした。実際開業するにあたり良い物件や場と出会うには、やはり実際に歩いたり、人とのつながりをつくったりしていくことが近道ではないかと改めて感じました。改修費用やリノベーションの方法、お店の佇まいやまちの空気感も実際に訪れることで実感できると思います。希望される参加者には、物件の情報を紹介するなど、引き続きフォローアップさせて頂ければと考えています。 「Meets上田のまち」は、次回は11月に開催予定です。秋から冬に向かって紅葉が色づく、まちあるきにぴったりな季節になるかと思います。日程などの詳細な情報は、まちづくり上田のHPをご覧ください。
当日の様子
7月9日(火)常田鷹匠町方面 編 面影様、kadokko様、NABO様向いの物件、上田映劇様
7月29日(月) 柳町鍛治町方面 編 Tee.様、NESTORE様、Yard様、元たばこ屋物件、26bldg
コーディネータープロフィール
長野県上田市出身。転勤族で幼少期は県内外を転々、中学・高校時代を上田で過ごす。大学卒業後、名古屋や東京の店舗設計施工会社にてお店づくりを約10年。震災を機に2014年にUターン。建築業界を一度離れ、「地元カンパニー」にて地域活性や移住促進のサポートや広報などを経験。企画で空き家問題に取り組んだ事がきっかけとなり宅建士を取得。現在は市内工務店にて営業や不動産取引を担当。建築×不動産の視点や経験を活かし、空き家の利活用やマッチング、エリアリノベーションに取り組む。町の拠点である「26bldg」ではイベント「にーろく市」や古道具店も仲間と運営。
「リノベーションまちづくり」に取り組みます
上田のまちなかにある魅力的な風景、通り、古くても趣きある建物に魅力を感じ、そこでお店を始めたり、自分達で改修したり、暮らしたりする人たちが増えてきています。
本来「リノベーション」という言葉は、建物に限ったことではなく、用途や使い方を変え、新たな価値を創造するという意味が含まれます。市街地活性化においても、今ある商店、新しくお店を出す人・移り住む人たちが、古い建物や工作物、今ある街並みや界隈の良さを活かしながら、少しずつ手を入れることでエリアの価値を高めていく「リノベーションまちづくり」が注目されています。
まちづくり上田株式会社では、リノベーションまちづくりにつながる事業者や市民の活動を支援していきます。
まずは、まち歩きなどを通じて、今ある上田のまちのポテンシャルを探ることから始め、上田のまちに関心のある人たちをつなぎ、交流を促進する事業を順次取り組みます。
まちづくり上田(株)について
本事業は、まちづくり上田株式会社を母体に、上田市商工会議所・上田市で取り組む「まちなかエリア価値向上プロジェクト」の一環として行っています。
まちづくり上田株式会社についてはコチラ